過去のチャートを観察し、現象を発見した。その現象を利用するための売買ルールも、おおまかに形になっている。
ここからは、結果を知らない状態で、そのルールを確かめる。
Forex Testerなどを使い、チャートの右側を隠す。
上位足を確認する。背景を読む。必要な条件が揃うまで待つ。ルールに従ってエントリーし、損切りや利確までの過程を確かめる。
実戦と同じように判断してみると、完成したチャートを眺めていたときには気づかなかった問題が現れる。
想像していたよりも、買える場面が少ない。
条件が揃ったと思っても、その後の値動きが思わしくない。
何度も機能しているように見えたアイデアが、実際にはそれほど安定していない。
そして、ここで、検証者自身の心理が顔を出し始める。
自分のアイデアを、守りたくなる
自分で発見した現象がある。
時間をかけて考えたルールがある。
「これなら使えるかもしれない」と期待していた。
ところが、実際に検証すると、うまくいかない。
もちろん、どんな売買ルールでも損失は発生し得る。何度か負けたからといって、そのアイデアが無効だと決まるわけではない。
問題は、失敗に出会ったときの反応だ。
「いや、この場面は上位足の背景が悪かったな」
「この形は、実戦なら入らなかったと思う」
「ここは、ちょっと例外だな」
その説明が正しい可能性はある。
しかし、確かめなければならないことがある。
THE QUESTION
その例外は、失敗する前から決まっていたのか。
結果を見た後で、都合の悪い場面だけを検証対象から外していないだろうか。
もしそうなら、いつの間にか検証の目的が変わっている。
最初は、アイデアが本当に使えるのかを確かめようとしていた。
ところが今は、アイデアが使えることを証明するために、失敗した事例を取り除こうとしている。
過去の結果を知ったうえで、その結果に都合のいい条件を増やしていけば、見かけ上の成績はいくらでも改善できてしまう。
だが、それが未来の相場でも通用するとは限らない。
これは、結果による事例の選別や、過去データへの過剰な最適化につながる危険な行為だ。
そして厄介なのは、本人が不正をしているつもりではないことだ。
もっと良いルールにしようとしている。
もっと精度を上げようとしている。
その善意の調整が、いつの間にか自分のアイデアを守るための作業へ変わってしまう。
成功も、失敗も、均等に拾う
だからこそ、検証を始める前に、一つ決めておきたいことがある。
成功した事例も、失敗した事例も、まずは同じように記録する。
最初に決めた条件に当てはまったのであれば、結果が利益でも損失でも、勝手に取り除かない。
そのうえで、両者を並べる。
成功したときには、どのような背景があったのか。
失敗したときには、何が違っていたのか。
その違いは、結果が出る前のチャートから判断できるものだったのか。
ここで初めて、ルールを調整する意味が生まれる。
たとえば、ある背景の有無によって結果に違いがあるように見えたとする。
それは、重要な発見かもしれない。
ただし、その条件を最初から存在していたルールとして扱わない。
新しく見つけた仮説として記録し、まだ調整に使っていない別の期間のチャートでも、同じ違いが現れるかを確かめる。
調整したルールと、調整前のルールは区別する。
こうして初めて、過去の結果に合わせただけの改善と、将来にも役立つ可能性のある改善を見分けるための材料が増えていく。
ここで重要なのは、失敗を減らしたという数字だけではない。
なぜ、その場面では実行しない方がよいと考えられるのか。
それを結果が出る前に説明でき、別の事例でも確かめられることだ。
検証は、終わらせることも難しい
しかし、ここまで理解していても、もう一つの問題が残る。
そもそも、検証という作業は非常に地味で、時間がかかる。
チャートを進める。条件が揃うのを待つ。判断する。記録する。また次の場面へ進む。
期待していたアイデアが否定されることもある。
想像したほどの成績が出ないこともある。
心理的な負担を感じながら、それでも事実を拾い続ける。
そして、その途中には誘惑がある。
「あれ? 今の値動き、別の使い方ができそうだな」
そう思った途端、今までの検証を中断し、新しいアイデアを調べ始めたくなる。
その新しい検証の途中で、さらに別のアイデアが現れる。
気づけば、いくつもの仮説を持っているのに、どれも十分には確かめられていない。
勉強している。チャートも見ている。時間も使っている。
それなのに、何が使えて何が使えないのか、結論が出ない。
こうした状態を避けるために、検証には作業を完了させるためのルールも必要になる。
たとえば、今日はまず10トレード分を検証すると決める。
その10件では、最初に定めたルールを勝手に書き換えない。成功も失敗も記録する。
途中で新しいアイデアを見つけたなら、メモしておく。
だが、今の検証を放り出して、そちらへ移ることはしない。
まずは、決めた10件を終わらせる。
THE TEN-TRADE RULE / 完了のための約束
- 最初に決めた条件を、結果を見てから書き換えない。
- 利益も損失も、条件に該当する事例は同じように記録する。
- 途中で出た新しいアイデアは、メモして次の検証に回す。
10件は作業単位であり、統計的な優位性を証明する件数ではない。
10件という数は、手法の優位性を判断するための統計的な基準ではない。あくまでも、一度に完了させる作業の区切りだ。
無理にエントリーを増やす必要もなければ、疲れているのに続行する必要もない。条件に合う事例がなければ、見送った理由も記録する。
大切なのは、新しい思いつきによって、今取り組んでいる検証の基準を途中で失わないことだ。
小さな完了を積み重ねながら、十分な件数とさまざまな値動き・背景の事例を確かめていく。
その過程で、当初のアイデアを捨てることになるかもしれない。
だが、それも検証の成果だ。
使えない可能性の高いアイデアを、実際の資金を大きく失う前に見送れるようになった。
それは、決して無駄な時間ではない。
残っていくもの
検証を続けていると、不思議な変化が起きることがある。
最初は、使えるパターンを増やそうとしていた。
だが、成功と失敗を比較し続けるうちに、実際に使うべきパターンの数は、さほど増えなくなっていく。
代わりに、そのパターンを使わない方がよいと考えられる背景が見つかっていく。
この位置では、まだ早い。
この時間軸では、狙う波が違う。
形は似ている。しかし、必要な背景が一つ足りない。
もちろん、除外条件を増やせばよいというものではない。条件を絞りすぎれば、過去の一部にしか合わないルールになってしまう。
だから、新しく見つけた違いも、検証の対象にする。
そうして残ったルールは、最初に思いついたアイデアより、ずっと少ない場面でしか使えないかもしれない。
だが、その一つひとつについて、なぜ実行するのか、なぜ見送るのかを説明しやすくなっていく。
そして、ここまで検証を重ねたところで、いよいよ実戦へ移る。
十分に調べた。ルールも明確になった。検証環境では、決めたとおりに実行できている。
ところが、実際の相場では、さらに別の問題が待っている。